経済の仕組みとして、需要が増えれば価格が上がるというものがある。
講師をしている者としては、人材不足なのだったら賃金を上げればいいのでは?と思ってしまうのだけれども、どうもそういかない事情があるらしい。
あらゆるところで不足する人材
保育士のなり手がいないから保育所を増やせないだとか、学校の教員不足で臨時免許を発行して担任にしたり他教科を教えさせたりしているというニュースが目立つ。
応募者が十分にいないということは、それなりの理由があるというように考えたほうがいい。
賃金が安いから有能な人材が集まらない
僕は保育士の賃金についてはあまり知らないのだけど、教員については応募した経験上それなりに問題意識を持っている。平均的なもので、1コマ(45〜50分)あたりの単価が2,000円〜3,000円で、これを1ヶ月あたりの授業週で掛けたものが月収になる。
1コマあたり月額1万円くらい。18コマで18万円。
このコマ給には授業準備や採点などの雑務も含まれている。
地方によってはこのお給金で生活できるところもあるのだろうけど、塾や家庭教師と掛け持ちしている人も多いという。貯金などする余裕もない。
教育現場の賃金安は官製
この賃金安は官製のものだと僕は思っている。
東京都の公立学校時間講師募集のページを見ると、勤務条件の欄には以下のような文言が並ぶ。
任用期間
各学校での講師を任用する事由によりますが、以下のいずれかのパターン
- 年間任用:4~3月の一年間
- 短期任用:年間任用以外の短期間(4~7月の1学期のみ等)
(中略)
授業時間数
各校の事由に応じて異なりますが週当たりの上限は26時間まで
報酬
- (1)勤務する時間数に応じて支給
- (2)1時間の報酬単価:経験区分に応じ1,880円~2,860円(平成29年11月1日現在)
- ※ 教職経験やその他の職歴の年数により経験区分が決定されますが、任用時に在職証明書等の提出が必要となります。
- ※ 交通費は通勤及び勤務の実情に応じて別途支給
東京都の時間講師の報酬は1時間1,880円~2,860円と非常に安い。
だいたい1つの授業準備に授業時間と同じくらいの時間がとられると考えると、最低賃金水準で働いていることになる。
民間のアルバイトも東京都内であれば時給1,000円はあたりまえのようになってきた。よほど教育に熱い人でないと耐えられないだろう。
保育所不足・教員不足への処方箋
需要があるのに供給が追いついていない場合は単価が上がる。これが自由主義経済の原則だ。
教員免許や保育士免許を所持しつつも民間の会社に流れている人材をどのようにすれば教育現場に来てもらえるか。それは、1コマあたりの報酬を上げることに尽きる。
「働き方改革」とか言っている場合ではなく、市場の原理に従って、まずは公立学校の賃金を大幅に上げる。そうすると私立学校も追随せざるをえなくなり、経営状態の悪い学校は淘汰されることになるだろう。
立憲民主党(@CDP2017) の枝野幸男さん(@edanoyukio0531)なんかも、保育現場・介護現場の給与を上げることで今まで滞っていた消費が高まると述べている(2017年衆議院選挙演説)。実際に消費に結びつくかは置いておいても、保育士や介護士、学校の教職員の給与は公立のものが基準として存在している。
現場の人々の給与を上げる。これは労働法制を大幅に変えることをしなくてもできる政策だ。高学歴ワーキングプアをこれ以上増やさないためにも、一刻も早く実現してもらいたい。
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