選択的夫婦別姓に対する誤解が広がっている。特定の宗教系団体のインフルエンサーが「選択的夫婦別姓は戸籍制度を破壊する」と意味不明な発言をしているのだ。これがSNSやYouTubeなどを通じて拡散している。
先日の産経新聞の世論調査でも不思議な設問があった。
選択的夫婦別姓制度の導入をめぐり、小中学生のほぼ半数が「家族で名字が変わるのは反対」と考えていることが、産経新聞社の調査でわかった。政府や報道機関などの世論調査は主に成人が対象で、夫婦別姓の影響を受ける子供たちの考え方が統計的に明らかにされたのは初めて。将来、自分が結婚した際の別姓も「したくない」との回答が6割にのぼった。
<独自>選択的夫婦別姓、小中学生の半数が反対、初の2000人調査「自分はしない」6割
産経新聞によると、「小中学生のほぼ半数が「家族で名字が変わるのは反対」と考えている」という。記事を詳しく読んでみると、これがまやかしの数字であることが分かる。
夫婦別姓で両親やきょうだいと違う名字になることの是非を問うと、「反対」49・4%、「賛成」16・4%、「親が決めたのなら仕方がないので賛成」18・8%、「よくわからない」15・4%で反対がほぼ半数を占め、積極的な賛成は少なかった。
<独自>選択的夫婦別姓、小中学生の半数が反対、初の2000人調査「自分はしない」6割
また、法律が変わった場合、将来自分が別姓を選択するかについては「家族で同じ名字がよいので別々にはしたくない」がほぼ6割となり、「自分の名字を大切にしたいので別々にしたい」は13・6%だった。
小学生だけにしぼると、別姓に「反対」は46・2%、自身が「別姓にしない」は55・8%で全体よりやや低かったが、各質問ともに「わからない」を選ぶ傾向が強かった。
夫婦別姓で両親やきょうだいと違う名字になることの是非というのはどういうことだろうか。選択的夫婦別姓はあくまでも「選択的」である。
もし、法律で「それぞれ別の名字のままでも結婚できる」ことが決まり、お父さんとお母さんが別の名字になったら、子供もお父さんかお母さんのどちらかとはちがう名字になったり、兄弟や姉妹でもちがったり、おなじ家族のなかでちがう名字になってしまうことがあります。こうしたことに賛成(さんせい)ですか、反対(はんたい)ですか。
選択的夫婦別姓、「賛成」16%「反対」49% 小中生2000人調査・質問と回答
問い方が恣意的である。「おなじ家族のなかでちがう名字になってしまうことがあります」などと夫婦別姓が悪であるかのような質問の仕方である。これは産経新聞の国家神道を信奉する社風が生み出した調査と言われても仕方がない。
正しい問い方はこうだ。
「現在、夫婦が同じ名字でないと社会的あるいは税制的など不利益を被る事実婚を選択している人々がいます。彼らに同じ名字の夫婦と同じ権利を認める選択的夫婦別姓という制度の議論が進んでいます。これに賛成ですか、反対ですか」。
僕らはこれまで「選択的夫婦別姓」という言葉を使ってきた。僕はTwitter(現:X)で何度か書いてきたのだが、現在は強制的夫婦同姓を強いられており、我々は法の下の平等により、夫婦別姓が強制されることを拒絶する。つまり強制的夫婦同姓から選択的夫婦同姓への転換である。
これから我々は「選択的夫婦別姓」という言葉を使うべきでない。宗教的右翼や自称普通の日本人が「戸籍制度の破壊を意図している」などと的外れな攻撃をする隙を与えてしまうからである。「選択的夫婦同姓」をいう言葉を使っていこう。
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