新元号「令和」の英訳が「beautiful harmony」に決まったそうだ。イギリス・BBCが「order and harmony」(秩序と調和)、アメリカ・NYタイムズが「order and peace」(秩序と平和)と訳すなど、「令」の字を「命令」のような軍事的性格のある訳し方をするメディアがあることへの反発だろう。「令」は「令月」(良い月)の「令」であると言いたいようだ。だがこの「beautiful harmony」、典拠とされる万葉集(初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香香)を踏まえていないように思うので僕なりの訳を与えてみたい。
「令」= “noble”
「令月」の「令」は「令嬢」「令息」「令夫人」「令名」などで使われる「令」だ。研究社のリーダーズ英和辞典/リーダーズ・プラス(電子辞書版)には以下の例が挙がっている。
the noble lady
令夫人《貴族の夫人のことをいうとき》the noble Lord
リーダーズ英和辞典/リーダーズ・プラス(電子辞書版;研究社)
閣下《上院議員同士間または Lord の称号を有する下院議員への呼びかけ》
『新漢語林』(電子辞書版)によると、「令」は「ひざまずき神意に耳を傾ける」から「すがすがしい」の語感が生じたという。 高潔な美しさを表したいのであれば、 “beautiful” よりも “noble” のほうが良さそうだ。
「和」= “calmness”
“harmony” は「調和」を表す語であって、「気淑風和」の「和らぐ」というものを一切反映していない。風が和らぐというと、 “relieve” なんかもいいけれども、 名詞形の“relief”も含めて圧迫からの除去などといったニュアンスがあって適当でない。単純に 「穏やかになる」意味の “calm” の名詞形 “calmness” がいいんじゃないかと思う。
「令和」= “noble calmness”
以上の考え方から、僕としては新元号「令和」の英訳として “noble calmness” を提唱していきたい。(ネイティヴチェックは受けていないのでニュアンスがどうなるかは知らないけれども)
「令和」を単純に書き下して「和セシム」と読むなら “make (somebody) unite” だけれども、『万葉集』を踏まえた訳を考えろというならばこのようになるのではないか。
いずれにしても、どこをどうやったら「beautiful harmony」になるのか全くわからない。「公式な典拠」とした『万葉集』の該当部分も、その引用元である漢詩も全く踏まえていないというのはどうしたものか。
僕の英語力が低いからそう感じるのか、或いは。
リンク
- 令和は「Beautiful Harmony」外務省が英語の趣旨説明 (毎日新聞電子版)
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