病院で処方された薬を調剤薬局で受け取るときに、先発品(ブランド)か後発品(ジェネリック)か選ぶことができる。ジェネリック医薬品は先発品と同じ有効成分が含まれていて、臨床試験を経ずに販売することができるため安価であることが多い。
医師によっては、ジェネリックではなく先発品を指定して処方箋に「変更不可」の記載をするひともいる。臨床試験を通った先発品のほうがいい。そういう医師もいる。
ところが、僕のかかりつけの皮膚科医は変わり者なのか、敢えてジェネリック医薬品を指定してくる。
個人的には安心感から先発品を使いたい気持ちなのだけど、ジェネリックに含まれる添加物が効果があるというのだから驚きだ。
何故、敢えてジェネリックなのか。
先発品を指定する医師は多いが、後発品を指定する医師はそう多くないだろう。
その理由はどこにあるのか、少しばかり考えてみたい。
後発品:アンフラベート0.05%ローション
湿疹がひどい僕に処方されたのは、ステロイド剤の「アンフラベート0.05%ローション」。
有効成分は「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」と記載されている。
先発品は鳥居薬品の「アンテベート」。
後発品にはアンフラベート(前田薬品工業)、 サレックス(岩城製薬)、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(日本ジェネリック)があるという。
有効成分だけ考えるとどれでもいいはずなのだけど、医師が指定するのはアンフラベート(前田薬品工業)。
製薬会社と懇意だとかそういう理由では決してない。
決め手は添加物に含まれる「かゆみ止め」成分
ジェネリック医薬品というのは、有効成分は同じだけど添加物や保存料、着色料などが製品によって異なる。
それによって効き目が違うかどうかは製品によるのだろうけど、今回アンフラベートが処方された理由は「添加物」だった。
処方箋には変更不可の理由としてこのようにある。
「添加物にクロタミトンが含まれているため」。
医師によると、アンテベートに含まれているクロタミトンはかゆみ止め成分で、これが先発品(アンテベート)に含まれていないのだそうだ。
添加物のクロタミトンも他の薬では「有効成分」
クロタミトンについて調べてみたところ、「オイラックス」として販売されているかゆみ止めで、処方薬のほか市販薬にも使われていることがわかった。
クロタミトンを有効成分して販売されている薬があるということだ。
アンフラベートには「添加物」として使われているものが、他の薬剤の主成分だというのだから驚きだ。
「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」剤のそれぞれの添加物
気になってきたので、同じ「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」を成分として販売されている医薬品の添加物がどれほど異なるのか、 KEGG DRUG Databaseで調べてみることにした。
先発品「アンテベート」(鳥居薬品)
医師の言うように、アンテベートにはかゆみ止め成分「クロタミトン」は含まれていなかった。
- アンテベートクリーム0.05%
- セタノール、スクワラン、白色ワセリン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、無水リン酸一水素ナトリウム、クエン酸水和物
- アンテベートローション0.05%
- オリブ油、セタノール、ステアリン酸、軽質流動パラフィン、メチルポリシロキサン、ポリソルベート60、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミン、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピレングリコール
アンフラベート(前田薬品工業)
今回処方されたアンフラベートは軟膏・クリーム・ローションの3種類がある。
このうち「クロタミトン」が含まれていたのはクリームとローション。
確かに「クリームとローション、どっちが塗りやすい?」とは聞かれたけど、軟膏は選択肢に挙がらなかった。
- アンフラベート0.05%軟膏
- ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、プロピレングリコール、白色ワセリン
- アンフラベート0.05%クリーム
- クロタミトン、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリルアルコール、ポリソルベート60、スクワラン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ジメチルポリシロキサン、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、グリセリン、クエン酸水和物、pH調節剤
- アンフラベート0.05%ローション
- クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ラウロマクロゴール、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、エデト酸ナトリウム水和物、グリセリン、pH調節剤
サレックス(岩城製薬)
後発品「サレックス」の添加物欄には「クロタミトン」の文字は見当たらなかった。
- サレックス軟膏0.05%
- パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン
- サレックスクリーム0.05%
- セタノール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、セトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、プロピレングリコール、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、エデト酸ナトリウム水和物、pH調節剤2成分、その他1成分
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(日本ジェネリック)
日本ジェネリックの「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」。
アンフラベート同様に、軟膏には含まれていないローションには「クロタミトン」の文字がある。
かかりつけの皮膚科医は部位によってクリームとローションを使い分けるので、選択肢に挙がらなかったのかもしれない。
- ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏0.05%「JG」
- ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、プロピレングリコール、白色ワセリン
- ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルローション0.05%「JG」
- クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ラウロマクロゴール、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、エデト酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、pH調節剤
先発品とジェネリックって本当に同じ効果なの?
こうやって主要成分以外の添加物を並べてみると、製薬会社によって使われているものが全然違うことがわかる。
「ジェネリックは先発品と同じ効き目で安いからジェネリックに切り替えよう!」という文句をよく聞くけど、果たして効き目は本当に同じなのだろうか。
個人的な実感としては、ジェネリックに変えたとたんに効果が悪くなったり、逆に効き過ぎたりということが少なくないので、このあたりの真相を知りたいところだ。
思い込みなのか、それとも本当に効果が異なるのか。よくわからない。
ともかく医者は選べ!
ここまで「添加物」が有効成分になっているという担当医の判断をもとに記事を書いてきたが、彼の判断がどこまで正しいものなのかというのは正直言ってわからない。
添加物というくらいだから微量なのかもしれないし、もしかしたら有効成分というには足りないくらいの程度で効果は変わらないのかもしれない。
そうはいっても、同じ有効成分の薬について添加物まで研究している彼の態度には敬意を表したいところだ。
医師免許を持っているからといって、専門医だからといって、ジェネリック医薬品の細かいところまで見ている医師はどれだけいるだろうか。
どうせ診てもらうのであれば、マニュアル通りの処方ではなく細かく研究している医師に診てもらいたいと思う。
参考・引用資料
- クロタミトン(Wikipedia)
- DRUG: ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(KEGG DRUG Database)
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