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掃除でうつが治るという暴論について:うつは「心の病気」ではない

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うつ病が重傷化するとそれまで出来ていたことが出来なくなるといったことが多い。身体が思うように動かないために炊事や洗濯、掃除といった基本的な家事がどうしても疎かになっていく。食事はコンビニにでも買いに行けば何とかなるが、洗濯や掃除というのは、ヘルパーを頼むなど介助者が必要になってくるため部屋が散らかり放題という患者も少なくないだろう。

そういったうつ病患者の部屋の状態に関して、「部屋を掃除すればうつが改善する」などという記事を目にすることがある。因果関係が逆転した暴論ではないだろうかと僕は思う。

彼らの主張がどのように間違っているのか、当事者の視点から考えてみたい。

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掃除をすればうつが改善する?

インターネット界隈や雑誌のうつ病特集、それにハウツー本の類いを眺めていると、「部屋を掃除すればうつが改善する」というタイトルで断捨離を薦めているものに出会うことがある。

曰く、部屋の状態は心の状態を表しているため、部屋の状態を改善すればガラクタが整理されて心の状態が落ち着き、うつ状態が改善すると。大凡の主旨をまとめるとこのようなものだ。

こういった記事を読んで真に受けたひとから、「掃除した方がいいよ」「断捨離すれば?」などと言われたことが幾度もあって、所詮うつ病になったことのないひとには分からないのだと途方に暮れてしまうのだ。

「服装の乱れは心の乱れ」論と同じ

健常者の皆さんに分かりやすいように学校の頭髪・服装検査を例に挙げて考えてみたい。制服を着崩したり頭髪を明るく染める生徒に対して、「服装の乱れは心の乱れだ」という言葉を発するひとがいる。

この言葉には、精神状態が服装に現れるという解釈と服装が乱れると精神状態がおかしくなるという解釈(後者は完全に意味がわからない)があるけれども、服装の在り方と精神状態とは殆ど関係がないのが実情だ。

さて、服装を変えれば精神状態は変わるのだろうか。新しいお気に入りの服を買ったときは一時的に興奮することもあるかもしれないが、それは長続きしない。脳の報酬系が一時的に動いたに過ぎず、それは服装でなくても、高級なお菓子でも何でも良かったりするからだ。

同じ事が「部屋を掃除すればうつが改善する」という主張にも当てはまる。掃除したかった部屋が綺麗になれば報酬系に何らかの作用を及ぼすかもしれない。ただそれは長続きすることはない。うつの原因はそこにはないのだから。

うつは「心の病気」ではない

うつ病のことを「心の風邪」だといった製薬会社があったからだろうか、うつ病が心の病気だと誤解しているひとが多いように思う。しかし、うつは心の病気ではない

よく使われる抗うつ病薬は脳内のセロトニンやノルアドレナリンを調整するもので、実体のない「心」に作用することはない。うつは脳の病気なのだ。

逆に言えば、脳の病気だからこそ薬物治療が出来る

うつ病が脳の病気なのであれば、精神論をぶつけたところで無意味なのは明白だ。部屋を片付けたところで脳内のホルモン値が変化するのは一時的なもので解決策にはなり得ない。

非常に残念なことだが、自分に合った薬を飲みながら休養するしか方法はないのだ。

それをひとの弱みにつけ込んで根も葉もないことを書き散らかすのは倫理的にどうなのかと思う。

まとめ

うつは心の病気でなく脳の病気なので、部屋を掃除すればうつが改善するということは到底考えられない。あるとすれば、部屋がきれいになったことで脳の報酬系に何らかの作用が起きて一時的に興奮状態になるくらいだ。脳の病気である以上、うつは「甘え」でもなんでもないので薬を飲んで休養を取るのが最善策。信頼できる主治医と相談して薬を調整するのが一番だと思う。

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プロフィール
悠木貴仁(P.N.)

ブロガー、高校・専門学校・大学非常勤講師(英語)。早稲田大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。修士(言語学)。

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