2017年12月25日、クリスマス。今日も教会の鐘が鳴り響く。
サンタクロースは子供達に平等にプレゼントを与えてくれるだろうか。クリスマスイヴに街を歩いていると、「(プレゼントに買ってもらったゲームで)遊びまくる! 今日は24時間寝ないぞ!」と5歳児くらいの男の子が両親に向かって宣言していた。
とても幸せそうな声だった。
筆者も1996年の冬に念願だったゲームボーイポケット(銀)とポケットモンスター(赤)を手に入れた時にそんなことを言った覚えがある。
うちのサンタクロースはゲームソフトとか色々なものをプレゼントしてくれたけれど、アイドルグループ乃木坂46の齋藤飛鳥さんのところは「小さい頃からサンタさんにお手紙とか書くし、クッキーとか用意するけど、でも絶対に封筒に『あすか』って書いて、現金が入ってる」(日本テレビ系「NOGIBINGO! 9」;2017年12月18日放送分)そうだ。
うちのサンタも軽く1万円を超えるゲーム機をねだった時はさすがにキツかったようで、「足しにしてください」的な手紙と共に福沢諭吉のお札が封筒に入っていたような気がする。
弱者を蔑む守銭奴たち
中流家庭に育った筆者は人並みにプレゼントを受け取ってきたわけだけれども、世の中には懐事情の問題で満足なプレゼントを与えてあげられないサンタクロースも多い。
クリスマスの朝に、すごく心が痛む記事が目に入ってしまった。
Yahoo! JAPANニュースに掲載された「日本テレビのみなさまへ、生活保護についての悪意のある番組放送はやめてください」と題されたそのエントリでは、認定NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」理事長の大西連さん(@ohnishiren)が「税金Gメン」が「悪質滞納者」宅を捜索して差し押さえる様子が放映されたことに苦言を呈している。
12月22日の19時~20時54分に、日本テレビ系列で『「ずるい奴らを許すな!」目撃!Gメン 徹底追及スペシャル(3)』が放送されました。
放送をみましたが、番組のなかでは生活保護の不正受給を取り上げ、不正受給をしたと思われる生活保護利用者を「ずるい奴」として、それを摘発する行政の職員をGメンとして描いていました。
記事によると、「Gメン」が取材陣とともに張り込みや尾行をして、吊るし上げる様子が放映されたのだそうだ。
家賃や税金の滞納をしている人にも落ち度があるが、警察の家宅捜索ですら裁判所の令状が必要な世の中で、地方公共団体が取材陣に情報を横流ししたうえに通帳のコピーまで公共の電波に乗ったのだという。
放映された2例は詐欺罪で告訴されていないということだから、捜索令状などは出ていないと推察される。どうも胸糞が悪い。
生活保護への誤解や偏見が拡がってしまうと、必要な人が支援を利用することへの心理的な妨げになる可能性もあります。
完全に同意見だ。お金の使い方をうまく管理できない人を吊るし上げるのではなく、どういう支援をしたら立ち直れるのかを考えて欲しい。
「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました」
「生活保護費をパチンコに使うなんて、この税金泥棒め!」なんていう守銭奴の叫びがインターネット上に溢れている。「あいつは犯罪者だ、吊るし上げろ」と言わんばかりに。
24日夜に公開された「税金Gメン」のエントリに呼応するように、朝日新聞デジタルに以前話題になった新聞広告についての記事が掲載されていた(「ボクのおとうさんは桃太郎に… 衝撃コピー、授業題材に」)。
「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました」。こんなキャッチコピーの新聞広告をもとに道徳の授業が生まれた。多様な価値観がぶつかり合う時代に、異なる視点を持つことの大切さを考える。桃太郎伝説の故郷、岡山県で始まった授業が全国に広がるか――。
鬼が村を荒らしているのは誰がどう考えても悪いことだ。
しかし、村を荒らす鬼を退治することは根本的な解決になるのだろうか。
現代の社会規範に照らし合わせると、鬼退治というのは報復戦争に他ならない。
どうやったら、鬼が村を荒らさなくなるのか。
どうやったら、鬼と共生できるのか。
悩み苦しみながらも平和的な解決策を模索するのが、人間の知的な営みであってほしい。
『桃太郎』を身近な物語として読む
この記事に書かれている道徳の授業では「農業を教える」と答えた生徒がいたそうだが、「鬼」が知的生物という前提ならそれもいいだろう。
ただ「鬼」を人間言語の通じない生命体に置き換えると、一気に私たちの身近な話となる。
「山菜採りをしていた人が熊に襲われた」「学校に猪が侵入した」「畑を食い荒らされた」…。「悪事」を働いた動物たちは害獣として駆除されることも多々あるが、果たしてそれでいいのだろうか。
動物との共生を探る道はないのだろうか。
山奥に生息していた動物が人里に下りてくるのは恐らく食糧不足だろう。
産業の発達とともに人口が爆発的に増えたことで山林の開発が進み、そういったことが「害獣」とされる彼らの生息地を奪ってきた可能性も大いに考えられる。
高度な文明を持った我々人類こそが他の動物に寄り添い、解決の道を探るべきではないだろうか。
童話『桃太郎』の鬼退治を侵略戦争として読む
『桃太郎』の勧善懲悪ではない読み方というと、作家の池澤夏樹さんによる朝日新聞の連載『終わりと始まり』の記事を思い出す。
東京本社版では2014年12月2日付夕刊10面に掲載された「桃太郎と教科書 知的な反抗精神養って」というエッセイ。
朝日新聞デジタルでは公開期間が終了してしまっているので図書館で縮刷版を探そうと思う。
桃太郎に出てくる鬼たちは近くの村から宝物やごちそうを盗んだだけであって、桃太郎やその養父母に直接危害を加えたわけではない。
きび団子で犬・猿・雉を雇って鬼ヶ島に侵攻し、鬼たちから宝物を取り上げる。そしてその宝物を持って帰り幸せに暮らしたというのだ。
宝物を元の場所に配って歩いたというような記述があったかどうかは覚えていないが、その宝物の処分方法によっても多様な解釈が得られるだろう。
いずれにせよ、「鬼に直接危害を加えられたわけではない桃太郎一行が鬼退治を行い、宝物を取り返した」というストーリーは、最近議論になっている集団的自衛権を議論するための教材としても使えるかもしれない。
まとめ
ディケンズの『クリスマス・キャロル』に出てくる守銭奴スクルージは「クリスマスおめでとう」という言葉に反発していたけれども、高度な知的文明を発達させてきた人類は(社会的)弱者に寄り添う姿勢を忘れてはいけない。改めて言おう、「クリスマスおめでとう」。人類が多様な価値観を認め合いながらも、より善く生きるための、より善く共生するための方法を探し続ける道を選ぶことを願う。
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