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漢字テストの誤答から考える:発達障害の人が生きやすい社会を目指そう

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先日Twitterで、ある児童の漢字テストの誤答が話題になった。

つぎの 日づけの ひらがな を かん字に なおしましょう

  1. さんがつ みっか:三月四日(正答:三月三日)
  2. くがつ ようか:九月九日(正答:九月八日)
  3. じゅうにがつ ふつか:十二月三日(正答:十二月二日)

(後略)

設問の趣旨は「以下の設問について、ひらがなで書かれた日付を、それと同じ日になるように漢字に直しなさい」というものなのだが、この児童は「(以下の設問について)ひらがなで書かれたものの次の日の日付を漢字に直して書きましょう」と解釈したようだ。(1問を除いて)一貫して(書かれたものの)次の日付を記入していることから、問題の解釈を誤ったものの推察される。

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これは単純な「誤答」ではない

筆者は医療関係者ではないし、心理学や児童の発達については完全に専門外だ。それをお断りしたうえで、この問題について考えたことを綴っていきたい。

つぎの 日づけの ひらがな を かん字に なおしましょう

人間言語の仕組み

人間の言語には、文法に沿って文を組み立てる能力のほかに、それを外在化(音声化・手話化)する能力、文に(辞書的な)意味解釈を与える能力、そして言外の意味を与える(行間の読み解く)能力がある。一つの可能性として、この児童は「言外の意味」を取りづらいのかもしれない。

「言外の意味が取れない」=非定型発達?

言外の意味を取りづらいというと、アスペルガー症候群(ASD)や自閉症を疑わせる。設問を見る限りは小学校の漢字テスト。特に公立の小中学校では、発達障害だという診断を受けないまま学年を重ねていくことも十分に考えられる。教員にとってはよくある「問題児」、あるいは「変わった子」という認識。医療機関に行けば「発達障害」とされて適切なケアを受けられるような子が見逃されてしまっているケースもあるようだ。

「言外の意味」を取る能力が遅れているだけ?

言葉を文字通りに解釈するからといって、必ずしも発達障害とも言えないと聞く。他人の心を理解する「心の理論」の発達は小学校低学年くらいまでに伸びるとも言われている。当該の漢字テストは小学校低学年の時期なので、そういった能力の発達が単に遅れているだけなのかもしれない。

あるいは文法能力の問題?

当該の設問をGoogle翻訳などの機械翻訳にかけると、”Let’s rephrnect the next days hiragana into kanji”という訳語が表示されるらしい。

機械翻訳は人間言語の文法とは違った仕組みで動いているので評価が難しいが、文節を切る場所を間違えている点では共通しているというのが興味深い。

アスペルガーフレンドリーな作問を!

公立の学校というのは、発達障害が見逃されて進学してくる子供も少なくない。今回の問題で誤答が生じたのは、「つぎの 日づけの ひらがな を かん字に なおしましょう」という文が多義性を帯びていることが原因だった。「ひだりに載せたひらがなの日づけと同じになるように、かん字を書きなさい」というようにガイドしてあげればいい。

非定型発達というのはいろいろなタイプがあるので、「つぎの 日づけの ひらがな を かん字に なおしましょう」を「ひだりの 日づけの ひらがな を かん字に なおしましょう」にするだけだと別のタイプの子供が違った誤答をしてくる可能性がある。作問というのは、非常に難しいものだ。

誤答であることに間違いはないのだから、それに丸をつけて点数を上げろとは言わない。問題の意図を説明して、人間の言語というのは多義性を帯びているだとフォローしてあげないと勉強嫌いになってしまう危険性がある。

そういうわけで、特に小中学校や「教育困難校」の現場に立っている諸先生方は、誤答の分析を丹念に行って児童生徒をフォローしていってほしい。

発達障害の人が生きていくための職業とは…。

発達障害の当事者の多くは「一般人」として定型発達の人々の多い社会で生活している。本来は行政や医療機関の支援を受けた方がいい人も、周りから「変わった人」と思われながら「生きづらさ」を感じて生きている。発達障害の人々に合う職業はないのだろうか。

発達障害の人には「個人事業主」「フリーランス」が向いている?

自らもADHDの気があるというアフィリエイトブロガーの「クロネコ屋」さん@NINJAkusokuso)は、「いわゆる発達障害かつ文系人にとって、サラリーマンという働き方はとても厳しい」と語る(文系ADHDの人はサラリーマンよりアフィリエイトやライターで稼いだ方が楽に生きれる/クロネコ屋の月100万稼ぐアフィリエイト講座)。

筆者は「文系」「理系」という大学入試の区分に基づいた分類は幻想だと思っているが、それを抜きにしたとしても「個人事業主」「フリーランス」というのは成果報酬で稼ぐのは難しいものの、時間に縛られない働き方というのは確かに合っている気がする。

勤め人なら上司の裁量次第

「発達障害」というのは「健常者」とスパッと切れるものではないし、人間である限り、誰もが何らかの「障害」を抱えながら生きている。そういう意味では、ASDとかADHDというのは「個性」と言えなくもない。

理解のある上司のいる職場であれば、マルチタスクの苦手な人をうまくコントロールできることもあろう。発達障害が「障害」であるのは、周りの理解がないからという点に限る。生まれ持った個性。それを生かすのが上司の腕の見せ所だ。

そういう意味では、『Strength Finder』が役に立つかもしれない。『Strength Finder』は、簡単なテストで34の特徴から5つの資質を見いだせるほか、それぞれの資質を持った部下のマネジメントについても記述されている。マネージャークラスの人は、自分の部下にテストを受けてもらって仕事に生かしてほしい。

参考文献・オススメ関連文献

発達障害関連

  • 岩波明(2017)『発達障害』(文春新書)
  • 岡田尊司(2009)『アスペルガー症候群』(幻冬舎新書)
  • 岡田尊司(2012)『発達障害と呼ばないで』(幻冬舎新書)

教育関係

  • 大村はま(1996)『新編 教えるということ』(ちくま学芸文庫)
  • 岡村遼司(2006)『人並みという幻想:教育を考える』(勁草書房)
  • 岡村遼司(2007)『子どもと歩く子どもと生きる:教育を考える 平野婦美子と近藤益雄』(勁草書房)
  • 黒柳徹子(1991)『窓ぎわのトットちゃん』(講談社青い鳥文庫)

言語科学関係

  • 酒井邦嘉(2002)『言語の脳科学:脳はどのようにことばを生みだすか』(中公新書)
  • 酒井邦嘉(2009)『脳の言語地図』(明治書院)
  • ノーム・チョムスキー(2015)『我々はどのような生き物なのか:ソフィア・レクチャーズ』(福井直樹・辻子美保子訳;岩波書店)

ビジネス書

  • トム・ラス(2017)さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版:ストレングス・ファインダー2.0(‎古屋博子訳;日本経済新聞出版社)

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